新型コロナウイルス感染症が有価証券報告書の開示に及ぼす影響【企業の概況~提出会社の状況編】

 前回の記事の続きです。

 

www.makiron.work

 

 今回は、有価証券報告書の前半部分である、「企業の概況」~「提出会社の状況」までの開示情報に関して、新型コロナウイルス感染症の影響を受けると考えられる部分についてご紹介したいと思います。

(注)正確な情報の提供に努めておりますが、個人的な見解であり、必ずしも正確でない部分も含まれます。その点、ご留意頂きますようよろしくお願い致します。また、本稿に含まれる情報の参照元については、本稿の最後にまとめておりますので、適宜ご参照願います。

 

 

事業の状況への影響

 事業の状況では、企業の経営方針や当期の業績の分析、事業に係るリスクについて説明が行われます。この領域の文章について、2020年3月期決算から「連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについて、『当該見積り及び当該仮定の不確実性の内容やその変動により経営成績等に生じる影響』などを開示すること(1)」が必要となる、と金融庁から公表された「新型コロナウイルス感染症の影響に関する企業情報の開示について(1)」で示されています。

 上記に加え、事業の状況の各パートの文章について、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、どのような開示をすべきかについて、金融庁から公表されている「新型コロナウイルス感染症の影響に関する記述情報の開示Q&A-投資家が期待する好開示のポイント-(2)」で考え方が示されています。

 各パートについて要約すると、以下のような開示が必要です。(以下、(2)の内容を要約)

 ■経営方針、経営環境及び対処すべき課題

  • 新型コロナウイルス感染症が自社の経営環境にどのような影響を与えているか(セグメント別)
  • 今後の経営環境にどのような変化をもたらすのかについての経営者の認識
  • 経営環境の変化に伴い経営方針・経営戦略を見直した場合、従前からの変更点
  • 経営方針・経営戦略を見直さない場合でも、見直す必要がないと判断した背景

 ■事業等のリスク

  • 新型コロナウイルス感染症が経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識している場合、その認識を事業のリスクとして記載

 ■経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

  • 新型コロナウイルス感染症の影響がどこで、どのように生じているか
  • その影響は一過性のものか長期に続くものか
  • 新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた資金繰り
  • 新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた成長投資、手許資金、株主還元等への資金配分のあり方
  • 資金配分のあり方を従来の方針から変更する場合、変更の理由と新しい資金配分方針

 

 なお、会計上の見積りに関する記載については、注記事項の追加情報にて記載を行っている場合には、その旨を記載することにより、事業の状況では記載を省略することが可能です。

 

コーポレートガバナンスの状況への影響

監査の状況

 監査の状況では監査役監査等、各種監査の実施状況を説明しています。新型コロナウイルス感染症の影響で監査の実施に制限がある等の場合、その制限の内容などを説明する必要があるようです。

 具体的には、以下のような情報を記載することが要請されています。(以下、(2)の内容を要約)

  • 新型コロナウイルス感染症の影響により、計画していた監査役等の活動のうち実施困難となったものの内容と代替的な対応
  • 代替的対応が困難である場合、その理由と監査を実施できないことによるリスク
  • 代替的対応を実施しない場合、その旨とその理由
  • 適正な監査の確保に向けた会計監査人との取り組み
  • 今後、同様の事象が起きた際の適正な監査を確保するための対応

 

役員の報酬等

 役員の区分ごとの報酬や役員報酬の算定方法などを説明する部分です。新型コロナウイルス感染症の影響を受け、役員報酬の算定方法を変更するなどといった対応をする場合には、算定方法の変更に至った背景や従来の算定方法との違いについて記載することが必要になるようです。

 

まとめ

 以上、前半部分の開示情報で新型コロナウイルスの影響を受ける部分について紹介しました。影響を受ける部分が広範囲にわたっていますが、いずれの開示情報においても新型コロナウイルスの影響やそれによる変化を丁寧に記載することが必要ということだと思います。

 今回紹介した内容がお役に立てれば幸いです。

 

 

 

出典・参考文献

本稿において引用した文章の出典は以下に示すとおりです。

(1)金融庁「新型コロナウイルス感染症の影響に関する企業情報の開示について」、2020年

https://www.fsa.go.jp/news/r1/sonota/20200521/01.pdf (2020年6月2日閲覧)

(2)金融庁「新型コロナウイルス感染症の影響に関する記述情報の開示Q&A -投資家が期待する好開示のポイント-」、2020年

https://www.fsa.go.jp/news/r1/sonota/20200529_kaiji/01.pdf (2020年6月2日閲覧)

 

本稿の執筆にあたり参考にした情報は以下に示すとおりです。

日本公認会計士協会「新型コロナウイルス感染症に関連する監査上の留意事項(その5)」、2020年

https://jicpa.or.jp/specialized_field/20200508ija.html (2020年5月31日閲覧)

日本公認会計士協会「新型コロナウイルス感染症に関連する監査上の留意事項(その4)」、2020年

https://jicpa.or.jp/specialized_field/20200422djf.html (2020年5月31日閲覧)

日本公認会計士協会「新型コロナウイルス感染症に関連する監査上の留意事項(その3)」、2020年

https://jicpa.or.jp/specialized_field/20200415aja.html (2020年5月31日閲覧)

日本公認会計士協会「新型コロナウイルス感染症に関連する監査上の留意事項(その2)」、2020年

https://jicpa.or.jp/specialized_field/20200410ijj.html (2020年5月31日閲覧)

日本公認会計士協会「新型コロナウイルス感染症に関連する監査上の留意事項(その1)」、2020年

https://jicpa.or.jp/specialized_field/20200318fcb.html (2020年5月31日閲覧)

金融庁「企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令」、2020年

https://www.fsa.go.jp/news/r1/sonota/20200417_kaiji/beshi1.pdf (2020年5月31日閲覧)

企業会計基準委員会「新型コロナウイルス感染症の影響に関する開示『会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響の考え方(追補)』」、2020年

https://www.asb.or.jp/jp/wp-content/uploads/20200511_432g_02.pdf (2020年5月31日閲覧)

企業会計基準委員会「新型コロナウイルス感染症への対応(会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響の考え方)」、2020年

https://www.asb.or.jp/jp/wp-content/uploads/20200409_429g_02.pdf (2020年5月31日閲覧)