監査はつまらない、は本当か?

 監査はつまらない、という話をよく耳にする。監査は公認会計士の独占業務である。公認会計士を目指す人々は、バカにならない時間をかけ、会計士試験に挑戦する。そして、やっとの思いで試験に合格した時には、念願叶って公認会計士になることができた、と喜びも一入だろう。その先に待ち受けているのが、多くの人がつまらないと言う、監査業務だと思うと少し寂しい気持ちになる。

 

 私は監査業務に5年程従事してきたが、つまらないと感じたことはない。むしろ、監査はおもしろい、と入社してから一貫して思っている。今は監査業務に携わっていないが、関与できるものならぜひ関与したいと考えている。また、監査業務をいかにして取り組むかを考える時にはワクワクする気持ちになる。

 

 そこで、今回は、私が思う監査のおもしろポイントについて紹介したい。

 

 

 

監査はつまらないと感じる理由

 監査をつまらないものと思うのはなぜなのか。気になったので少し調べてみた。Googleで「監査」「つまらない」のキーワードで検索すると、関連するブログの記事などが多くヒットした。いくつかの記事を読むと、監査がつまらないと感じる理由は主に3つあるようだ。

 

 まず、監査は財務諸表をチェックする仕事であり、単純作業が多いということ。次に、チェックする仕事であるため、何かを作るような創造的な作業がないということ。最後に、1年を通して実施する作業が決まっており、毎年同じ作業の繰り返しになり、刺激がないということ。

 

 ほかにもつまらないと感じる理由はあるかもしれないが、私が読んだ記事ではこんなところであった。

 

監査はおもしろい仕事である

 確かに、監査にそのような面があるのは事実だと思う。だが、少し頭を使って考えれば感じ方は変わると思うし、つまらないと言われた部分以外の監査の魅力的な部分も大いにあると思う。それこそが、私が監査をおもしろいと感じる理由である。

 

おもしろいとはどういうこと?

 具体的におもしろいと感じる部分を紹介する前に、おもしろいとはどういうことなのか、をあらかじめ定義しておきたい。

 

 私は頭を使って何かを考えることが好きである。そのため、何らかの仕組みや方法を考えることや、分析すること、会社の仕組みを明らかにし理解することなど、考える作業であれば夢中になって取り組んでしまう。

 

 夢中になって取り組むというのはおもしろいと感じていることと同義であると思う。例えば、おもしろいと感じる漫画があれば、時間を忘れて読みふけってしまうのが大多数だろう。よって、夢中になれる作業=おもしろい作業と定義する。私の場合、考える作業=夢中になれる作業であるため、ここでは、考える作業であることを「おもしろい」の条件としたい。

 

おもしろいと感じるポイント① 分析作業

 私が監査をおもしろい仕事であると感じる理由を3つ紹介する。監査は単純作業が多いという話があるが、それと同じぐらい分析する作業も多い。この分析作業こそがおもしろいと感じる一つの理由である。

 

 どういうことかというと、分析するとは、財務諸表の数値がなぜその数値になったのか、前年から数値が変動しているがなぜ変動したのか、などを徹底的に考える必要がある作業である。また、その際には自分で仮設を立て、仮設に基づき情報収集を行い、仮設が正しいかを検証する作業を繰り返すこととなる。このように、分析作業は考える作業が中心の作業であり、ゆえにおもしろいと感じるポイントの一つである。

 

おもしろいと感じるポイント② 監査手続の設計

 私が監査をしていた時は、常に、この監査手続は何を目的に実施しているのか、なぜそのような手続を行う必要があるのかを考えていた。その中で、この方法よりも別の方法で検証した方が、効果が高いと感じた場合や、この手続は無駄なので実施せずに、別の手続を実施する方がよいと感じた場合には、その都度、上司に自分の意見を伝えていた。

 

 すなわち、自ら主体的に監査手続を設計し提案していたのである。どうすればもっと効率的・効果的に監査をできるかを考え、そのやり方を考えることはとてもおもしろい作業であると感じる。

 

おもしろいと感じるポイント③ 会社の事業理解

 単純作業であるとか、創造的な作業がないという意見があるが、それは既に出来上がっているものを自分で深く考えず、受け入れてしまっているからこそ、そのように感じるのではないか。監査手続の設計を含め、主体的に考えれば、創造的な作業をできる領域は大いにあると考える。

 

 会計士ほど、会社の情報を縦横無尽に閲覧できる職業はないと思う。会計データだけでなく、人事データ、社内規程、稟議書、取締役会議事録、契約書、など会社のほぼ全てのデータを閲覧できるといっても過言ではない。しかも、監査で関与する多種の会社のデータを見ることができるのだ。

 

 これほど素晴らしいことはないと思う。規程一つをとっても、こういう内容の規程ではこの論点について記載が必要であるとか、契約書一つをとっても、自社に不利にならないようにこういう条件を設定する必要があるとか、非常に勉強になる。

 

 また、知り得た情報をもとに、会社の事業活動がいかにして会計数値に結び付いているのかを明らかにすることができ、会社に対する理解を深めることができる。

 

 監査は会社の事業を深く理解することが重要である。その理解の過程で、恵まれた情報をもとに、事業活動の仕組みを解明する必要があるが、その作業はまさにおもしろい作業である。

 

まとめ

 以上、私が監査をおもしろいと感じる理由について紹介した。監査は頭を使わず何も考えなければ単純作業である。だが、少しでも考えて取り組めば、考えるべき部分が大量にある創造的作業にすることができる。専門家である以上、頭を使ってこそ価値がある、と私は考える。監査を価値あるおもしろい仕事とするのは、頭を使って考えて取り組むことができるかどうかにかかっている。