会計まにあ

会計士、会計実務、会計基準のことなど

幻(?)の会計基準、修正国際基準(JMIS)とは?

日本には、適用可能な会計のルールブックとして、修正国際基準(JMIS)というものが存在していることをご存知でしょうか?

日本の上場企業のほとんどは日本発のルールブックである日本基準を、一部のグローバル企業ではアメリカ発のルールブックである米国会計基準を適用しています。最近ではIFRSを適用する企業も増えてきました。

では、修正国際基準は?。。。。。適用している会社は、たったの1社もないんです。
選択肢の1つとして確かに存在するはずなのに、1社も、ない(私の調べた限りですが)。なぜなんだろう。

ということで、今回は修正国際基準について、基準設定の経緯、その内容、本当に適用している企業はないのか?などを紹介したいと思います。

 

1.基準設定の経緯

修正国際基準は今から約4年前の2015年6月30日に公表されました。公表にあたり企業会計基準委員会は、「『修正国際基準(国際会計基準と企業会計基準委員会による修正会計基準によって構成される会計基準)』の公表にあたって」というプレスリリースを行いました。
(参照:https://www.asb.or.jp/jp/wp-content/uploads/20150630_01.pdf

 

ざっくりとまとめると、
世界的にIFRSを適用していくことは世界経済にとって良いことだから、日本でも頑張ってIFRSの適用を進めていくね!基本的にはIFRSのルールを全面的に受け入れるけど、日本の事情があって受け入れるのが難しいルールもあるなぁ。。。
じゃあ、受け入れられないルールは修正して日本版のIFRSを作ろう!それで、あるべきIFRSはこうだ!っていうのも発信していけたら一石二鳥だね!
ということです。


ヨーロッパでのIFRSの強制適用をきっかけに、世界各国でIFRSの適用が急速に進んでいったわけですが、日本では純粋なIFRSを受け入れることを基本としながらも、日本企業への影響を考えて生み出されたのがこの修正国際基準ということですね。
 

2.修正国際基準の内容

日本で受け入れることが難しいルールを修正している修正国際基準ですが、じゃあ具体的にどんな内容になっているかというと、ほぼIFRSと同じです。99%ぐらいIFRSです。

実際に修正されているのは、「のれんの償却」と「その他包括利益の組替調整」の2つの論点だけです。それ以外はすべてIFRSと同じ基準となっています。

では、どのような修正が入ったのか。具体的に説明します。

・のれんの償却
IFRSではのれんは償却を行わず、毎年、減損テストと呼ばれる手続を行い、一定の場合に費用処理を行います。一方、日本基準ではのれんは20年以内の一定の年数で償却を行い、規則的かつ定期的に費用処理します。

のれんという実体のない資産の消費パターンを正確に把握することはできず、よって償却を行うことはできないし、償却を行ったとしてもその情報に有用性はない、とするのがIFRSの主張。

投資のコストと投資の成果を期間対応させる必要があるため、消費パターンはわからないけれど、それでも一定のパターンで費用化していくべき、とするのが日本基準の主張。

日本では、「正確な期間損益の計算を行うことこそが会計の目的である!」、という考え方ですが、IFRSでは、「資産と負債を正確に描写することが会計の目的だ!」と考えているため、主張の差異、ひいては会計処理の差異が生じています。

のれんの償却に関しては、IFRSの会計処理を受け入れると、日本の会計の考え方にそぐわない会計処理を行うこととなるため、修正国際基準では当該論点について日本基準と同様の会計処理とするよう、IFRSを修正しています。


・その他の包括利益の組替調整
IFRSでは包括利益に関して組替調整(過去に包括利益に計上された金額を純損益へ振り替える調整)を行わない項目が一部ある一方、日本基準ではほぼすべての包括利益に関して組替調整を行うことを要請しています。

日本基準では上記でも述べたように、期間損益計算を正確に行うことを重視しています。ですので、損益計算書を経由せずに純資産の部に計上される包括利益に関して、損益として計上すべきタイミングが来たら、損益計算書を経由した上で利益剰余金とすべきと考えます。

一方、IFRSでは資産及び負債の測定に重きを置いており、期間損益の正確さは重視していません。また、一期間の純損益よりも純資産の変動である包括利益を重視しています。そのため、一度包括利益として認識したものをもう一度純損益として認識するとすると、利益を二度計上することになるではないか!と考え、組替調整を行わない項目があるのです。

この点に関しても、のれんの論点と同様、日本とIFRSで根本的な考え方の違いにより生じていることから受け入れ難いと判断し、修正国際基準ではIFRSを修正し、日本基準と同様の会計処理を規定しています。


この2つの修正は修正国際基準の最初の公表時に発表されたものであり、これ以降、修正している点はありません。IFRSは日本基準と異なるところが多いので、個人的にはもっと修正されるところがあるかと思っていました(会計の考え方が違うので)。

なので、日本もIFRSを最大限受入れようとする姿勢なんだなぁという印象です。
どう頑張っても受け入れ不可能な部分は修正していますが、健全な反応かなと思います。
修正国際基準は日本の企業会計のためのIFRSという感じがするのでもっと評価されてもおかしくはないかと思いました。

なお、近年のIFRSの大型改正として、IFRS第15号「収益」やIFRS第16号「リース」がありますが、修正国際基準でも特段の修正は入らないようです。
(2018年12月27日に最新の修正国際基準が公表され、IFRS第16号は修正なく受け入れることとなっています)

 

3.適用している企業は本当にないのか?

 適用している企業は本当にないのか?開示情報の検索サービス等、駆使して調べてみましたが、現在適用している会社はゼロのようです。

過去に新日鐵住金が修正国際基準の適用を検討していたようですが、2018年3月2日のプレスリリースにてIFRSの適用を行う旨を開示しました。

なので、現在では適用を検討している会社もいなくなってしまっています。
ただし、IFRS適用会社は現在約200社、日本の上場会社数は約3,600社ですので、まだまだIFRSの適用は広がっていません。そのため、今後、適用する会社が現れる可能性はあると思います。

今後も修正国際基準の動向は要チェックですね。

 

 

おしまい。